「権利義務取締役」の功罪とその対処法②~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
2.
「権利義務取締役」の規定は、現経営陣側にアドバンテージをもたらすことが多いため、特に現社長派が少数派である場合、現社長派が常務派に対して様々な引き延ばし工作を講じてくることは非常によくあります。
合法的な範囲の手法を1つだけ紹介させていただくと、株主による株主総会の開催許可の要件の一つに、株主は、会社に対して、①株主総会の招集を請求しなければならないこと、②上記①の請求のあった日から8週間以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が会社側から発せられないこと、というのがあります。
この規定のため、株主から会社に行った株主総会の招集請求に対して、会社側が請求日から8週間ギリギリの日を株主総会の日とする招集通知を出してきた場合、株主側はたとえ過半数の株式を握っていたとしても、一旦は8週間近く、株主総会の開催を待たなければなりません。
牛歩戦術と言われればその通りなのですが、現社長派も必死な上に、早期に、しかも株主側の主催で株主総会を開催させることは会社側にとって良いことは何一つありませんので、このような合法的な範囲内での引き延ばし工作は常套手段と言えます。
私自身、現社長派・常務派どちらの側に就くこともよくありますし、ここにはとても掲載できないような違法スレスレや違法まがいの方法をされることも少なくありませんので、その方法一つ一つをここで列挙することは致しませんが、このような引き延ばし工作がなされがちであることが、内部紛争やトラブル型の事業承継の解決時期などの見通しが立てにくい理由の一つであったり、内部紛争やトラブル型の事業承継を集中的に取り扱う弁護士が少ない理由の一つであったりするのかもしれない、と個人的には思ったりもしています。