「権利義務取締役」の功罪とその対処法③~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
3.
これまでにも若干述べましたが、「権利義務取締役」は、本人の意思で辞任できないなど、取締役の様ではあるけれども取締役とは一線を画する、と解されています。
そのため、上記1のような場合、職務執行停止及び職務代行者選任申立や取締役解任の訴えを提起することは出来ない、というのが裁判所のスタンスです。
株主からすれば非常に許しがたいことですが、会社法の規定によって権利と義務を付与された取締役である以上、正規の取締役と同様の手続きによって、その権利義務を奪うことはできないと解されているのです。
もちろん、現社長派が、会社の金を(現在進行形で)横領しているのに、これを止める手立てがない、というのは明らかにおかしいと言えます。
そこで、このような場合は、一時取締役選任の申立(会社法351条3項等)をすべきである、と考えられています(類型別会社訴訟Ⅱ〔第三版〕)。
なお、理屈上、株主は、新任役員の株主総会の開催などを経ることなく、直ちに一時取締役選任の申立をすることが出来ます。もっとも、一時取締役選任の手続きは、暫定的な対応に過ぎず、新役員の選任は、本来は株主総会で解決すべき事柄ですので、一時取締役選任の前に、新任役員の株主総会を開催すべきであると考えます(私見)。
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