検査役選任申立の積極的な活用法④~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
2.
株主総会をリードしたいと考える側が総会検査役を選任する株主総会の実施を決めてから実際に株主総会を終えるまで、3~4か月程度で終わる場合がほとんどです。
役員側の立場で株主総会を開催するのであれば、法形式的には法律で定められた時期(会社法299条1項、閉鎖会社であれば通常1週間)に招集通知を発送すれば十分ですし、株主側の立場で株主総会の開催を求めたとしても、株主側の開催請求に対する会社主宰の株主総会の実施時期が開催請求日から8週間以内に限定されていること(会社法297条4項2号)との兼ね合いから、どちらが主催するかは兎も角、3~4か月もあれば、総会検査役立会いの下の株主総会自体は実施することが出来ます。
訴訟手続きが1~2年、長引く場合はそれ以上かかることもあることと比較すると、手続きの着手から手続き完了までの時間的な短さは、十分注目に値すると言えます。
繰り返しになりますが、総会検査役を選任して株主総会が実施されますと、「違法性の抑止機能」により、反対派の株主や役員によるかく乱工作に邪魔されずに円滑に株主総会を実施することが出来る場合がほとんどです。
また、「証拠保全機能」により、株主総会の有効無効等で争点となり得る事項は総会検査役の調査を通じて報告書化され、双方当事者は、後の各種会社訴訟を提起した場合の見通しをより立て易くなります。
更に言えば、少なくとも株主総会を実施した後の段階では、株主総会の実施前や実施中のやり取りを通じて、事案全体の落としどころを当事者間で共有できている場合もあります。
そのため、和解等が成立しているかどうかは兎も角、株主総会の実施後に、あらためて株主総会の有効無効等の訴訟が行われることは結局回避され、終局的解決と言ってよい程度に紛争が沈静化した、という場合も少なくありません。
何よりも、そのような「総会検査役を選任した株主総会を実施した」ということが一つの中間的な結論である、ということが言えるでしょう。
このように、「総会検査役を選任する株主総会」を実施することで、「当該事案に対する一定の中間的結論」が3~4か月で出されることになるわけですが、総会検査役の選任が持つ様々な機能の複合的効果により、その意味合いが大きく高まることになります。