解決事例

取締役の解任のために、株主が株主総会を開催することはできますか?

依頼者の方にとって、せっかく実施した株主総会が後の訴訟でひっくり返されてしまった場合は、それまでに費やした時間とコスト(弁護士費用を含む)が無駄になってしまいます。後の訴訟で「証明」の程度(イメージとしては7~8割)までの立証をすることが微妙と思われるケースでは、私の場合、遮二無二許可決定を取りに行くようなことはせず、株主権確認請求訴訟などの別の方法をご案内させていただくことになります。

(4)会社法上、許可決定を受けるにあたり、裁判所が現経営陣側の意見を聞くことは要件とはされていません。しかし、実務上は対立当事者の側の意見を聞かないまま裁判所が許可決定を出すことはほとんどなく、現経営陣側に申立人(株主側)から提出された申立書類を裁判所から送付し、双方の意見を聞く審問期日を開いた上で判断するのが通常です。

したがって、申立に際しては、現経営陣側からの反論を想定しながら準備を進めていく必要があります。

(5)仮に形式的な要件を満たしていても、株主総会開催許可の申立が権利濫用と認められる場合、裁判所は、申立を却下することになります。権利濫用と認められる場合の要件は、①客観的に株主総会を招集することに実益が無くかえって有害であること、②主観的に申立人に害意があること、とされています。

権利濫用と認められる場合の証明の程度が「疎明」(5~6割)で足りるのか「証明」(7~8割)の程度を要求されるのかは、まだ突き詰めて研究したことはありませんが、株主による株主総会開催の法律上の重要性からすると、「疎明」では不十分な印象を受けます。但し、許可の際の各要件が「疎明」で足りることとのバランスや、とりわけ株主総会の開催によって現経営陣の解任・変更が予想されるような場合において会社が事実上受ける影響の大きさ、などを考慮しますと、(特に申立を検討されている方の場合は)「証明」の程度が要求されるだろう(つまり開催許可が認められるだろう)と安易に見立てるのは危険です。権利濫用と判断され得るのではないか、とご不安に思われる場合は、その要素が解消されるのを待つか、許可が認められない場合も有り得ることを念頭に申立をされた方が良いでしょう。

但し、権利濫用と判断されてしまうのは裁判例上もかなり極端なケースですので、それほどご不安に感じていただく必要はありません。

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