【株式と相続②】遺産分割の審判が係属中での株主総会の実施について
私は、1960年創業の大阪府内の卸売業を営む会社の代表取締役を務めている者です。経営者向けの電話・メールでの法律相談をしていただけるということでこの度相談させていただきます。当社は、発行済み株式総数5万株(額面上は1株500円)で、もともとは株主3名、取締役3名の閉鎖会社でした。
もともとの3名の株主は、会社設立者である私の妻の父(義父)と、妻の弟(義弟)と妻で、持株は、義父が3万株で、妻と義弟がそれぞれ1万株ずつ保有しておりました。一昨年義父が他界したことにより、義父の株式を、(義父より先に他界した妻の母(義母)を除く)義弟・妻の2人が相続いたしました。
取締役は、ここ10年ほど、私(代表取締役)と妻と私の部下のA氏(非親族)の3人が務めております。
義父は、保有株式3万株をいずれ私に譲る、と言ってくれてはいたのですが、タイミング悪く、生前贈与や遺言書の作成が間に合わないまま他界してしまいました。
そのため、義父が他界した後、私が当社を継ぐことを快く思わない義弟と妻(・私)とが対立してしまい、現在、遺産分割の審判が係属中です。
問い1
この度、取締役の改選時期が来たので、株主総会を開催して取締役3名を選任し直さないといけません。
参考事例を読んで、①義父が保有していた3万株が共有状態として扱われること、②共有者間の協議で権利行使者を指定して会社に通知しなければ権利行使できないこと、は分かりました。
ただ、妻と義弟との間の対立は熾烈を極めており、権利行使者一人を選定するような状況ではありません。また、共有持分も妻と義弟とで同じ割合なので、多数決で決める、ということもできません。
義父の株式を除く、本来の妻と義弟の持株も1万株ずつなので、このままだと選任決議も出来ません。
そこで、当社としては、妻が(義父保有の)3万株の権利行使者とすることを認めて対応しようと思うのですが、会社の側の都合で、株式共有者の内1人の権利行使を認めても良いのでしょうか。
答え
会社の側の都合で、株式共有者の内1人の権利行使を認めることは許されません。
共有株式の場合、権利行使者1人を選定しなければ、権利行使できない(会社法106条本文)と規定された趣旨は、共有株主の権利行使の適正手続を確保したものと考えられます。
したがって、会社の側の都合で、株式共有者の内1人の権利行使を認めることは許されません(最判平成11年12月14日判決等)。