親族内承継と会社法(株式会社)① ~会社法(株式会社)と親族内承継のジレンマ~
1.会社法(株式会社)における大原則
会社法(株式会社)における大原則は、会社の重要な決定は株主総会によって決議をしなければならないことです。会社の経営を実際に担う取締役や代表取締役も、株主総会決議によって選任されます。株主が気に入らなければ、株主総会決議で承認することにより、対立する取締役を解任することも可能です(不当解任の場合は損害賠償請求される問題は残ります)。
当然ながら、議題の可決は、議案に賛成する株主(群)が、賛成要件(普通決議であれば出席株主の過半数、特別決議であれば3分の2以上など)を満たす株式を保有しているかどうかのみによって決まります。
「長男より、次男の方がかわいいから。」「三女は可哀そうだから。」などといった、親族内承継で起こりがちな人的文脈やつながりは、その良し悪しは別として、会社法では基本的には分離されます。
会社法と親族内承継は、特に株式会社の場合、法律の規定上、構造的なジレンマを抱えていることに留意する必要があります。
2.誰が株主かが分からない
会社法(株式会社)における大原則からすると、誰が株主であり何株保有しているのかは、問題を解決するうえでもっとも重要なファクターになります。
ところが、親族内承継の場合、「株主名簿が作成されていない」「名義株が利用されている」「名義株と実質株が入り混じっている」などの理由により、肝心要の株主が誰なのかが分からないケースがあります。
実質株の認定は容易ではなく、ときには会社の支配権を握っている経営陣が、敗訴によって会社を追い出されるケースも無くはありません。
3.親族内承継は会社法に配慮して行うことが重要
以上の通り、親族内承継を実施する場合、①現在の株主(支配株主)は誰か、②将来的に継がせたい後継者(≒未来の支配株主)は誰か、③現在の支配株主から未来の支配株主にどのような手順で株式を移していくか、が非常に重要で、会社法に配慮しながら実施していく必要があります。
円滑な親族内承継の実現には、会社法に詳しい弁護士の関与が大切ですが、親族内で揉めさえしなければ取りあえず何とかなってしまうことなどから、親族内承継において弁護士に相談するケースはまだまだ多いとは言えないのが現状です。
以 上