事業承継コラム

弁護士×中小企業診断士の視点④:「事業承継」はなぜ進まないのか?

1.進まない事業承継

先日、大阪弁護士会中小企業支援センターの事業で派遣されていた、「EGおおさか」の成果発表会で、今後、「弁護士×中小企業診断士」の立場として、「事業承継」の問題に精力的に取り組んでいきたい、ということを発表させていただいた。

講評していただいた、りそな総合研究所のリーナルビジネス部長からは、「ご指摘の通り、事業承継は、今まで様々な支援機関が、PUSH型で支援に取り組んできているものの、当事者の重い腰を上げさせるには至っていない、という現状がある。それは何故なのか、という深掘りを更にしていただくことを、課題として指摘させていただきます。」というありがたいご指摘を受けた。

私自身は、これまで「会社紛争・内部紛争・経営紛争」を得意としており、これからも同分野に注力していきたいと考えているが、肌感覚で言えば、会社紛争や内部紛争の約7割は事業承継が絡んでおり、「弁護士×中小企業診断士」として、特に「事業承継」問題に精力的に取り組んでいきたいと、内外に公言している。

そのため、講師にご助言いただいた「事業承継は、なぜ進まないのか?」という問題について、私なりに思うところを指摘して、思考の整理と今後の取り組みの方向性の見極めなどに役立てていきたい。

 

2.事業承継への取り組みには周囲からの働きかけが非常に重要

まず前提として、「事業承継」が進んでいない、というのは、半ば公知の事実である。

下記は、2013年版中小企業白書などで紹介されるデータで、事業承継に取り組む者には使い古された感があるが、議論の出発点として、一応、紹介しておきたい。

規模別・事業承継時期別の経営者の平均引退年齢の推移

 

中小企業の経営者年齢の分布

社長の平均引退年齢も経営者年齢も年々増加している≒中小企業での事業承継が殆ど進んでいないことを如実に物語っている傍ら、下記のデータが示す通り、事業承継に取り組むきっかけには周囲からの働きかけが非常に重要であることは「2017年版中小企業白書」でも指摘されており、支援機関として、事業承継は喫緊に取り組まなければならない問題であることは、今更言うまでもないだろう。

経営者の年代別に見た、経営や資産の引き継ぎの準備を勧められた相手(中規模法人)

3.当事者の非当事者意識?

事業承継問題の特徴として、まず、「当事者の非当事者意識」という点が挙げられよう。

遺言や相続を念頭に置いてもらえるとわかりやすいが、事業承継が、現実の問題としてクローズアップされるのは、事業を承継していく側であるはずの社長なり創業者なりが一線を退いてからになる。

そして、「一線を退く」のが、「社長なり創業者なり」が生存している時であれば、その時点で事業承継の問題は顕在化するので、当事者である社長や創業者が「当事者」のまま事業承継に取り組むことができる。

もっとも、もし社長や創業者が死亡に伴う形で「一線を退く」のであれば、事業承継の問題は、当事者であったはずの「社長なり創業者なり」が実質的にかかわることなく次世代に引き継がれ、顕在化することとなる。

翻って、日本では、中小企業における同族経営の比重、とりわけ「社長=創業者」という割合が多いので、前記の「中小企業の経営者年齢が上がっている」というデータは、「社長=創業者」がそのまま経営者として残っていることをほぼ意味している。

社長や創業者が経営者として残っている理由はさまざまであると思われるが、「死ぬまで現役でいたい」「(辞めたいけれど)まだまだ現役でいる必要がある」などと社長なり創業者なりが仮に思っているのであれば、事業承継は自らが直接関わらない問題(≒非当事者性意識)となってしまい、事業承継問題に取り組む動機付けは一気に冷え込んでしまう。

実際、私が関わっている中小企業の経営者の方でも、「いつまでも現役でいたい」「(辞めたいけれど)まだまだ現役でいる必要がある」と思われる方は少なくない。中には、自らの長男と次男など、複数の事業承継の候補者はいるけれど、「自分の手でどちらかに決めるようなことはしたくない」という、良くも悪くもどちらにもいい顔をしたい、という気持ちから、事業承継をさせる者を絞り切れないまま、冥土に旅立たれてしまうケースもある。

私見だが、このような「当事者の非当事者意識」という点は、(支援機関が懸命に取り組んでいるにもかかわらず)事業承継が思うように進んでいないことの一因ではあるまいか。

 

4.緊急性の欠如≒他の経営課題を解決する優先度が高い?

次に、事業承継が思うように進まない理由として、「緊急性の欠如≒他の経営課題を解決する優先度が高い」という点を挙げたい。

以下の統計の通り、年齢が上がるに連れて、事業承継の問題に取り組まなければならない必要性は当事者に認識されてはいる。

 

問題は、取り組みの必要性が認識されているにもかかわらず、なぜ後回しにされているかであるが、ここでは、「事業承継問題の緊急性の欠如」≒他の経営課題を解決する優先度が高い、という点を指摘したい。

次のデータは、実際に事業を引き継いだ際に問題となった点をまとめたものである。

 

「社内に右腕となる人材が不在」、「引継ぎまでの準備期間が不足」など、多くの問題点は、事前に、かつ、早期に取り組んでおくべきだったと、事後的に評価する理由にはなるだろうが、事業承継に取り組むべき当事者の社長や創業者にとって、それは「他に解決すべき(目の前の)経営課題」を抑えてまで取り組まなければならない経営課題、とまで、果たしていえるであろうか。

社長や創業者にとっては、日々の資金繰りや目の前の製品の製造や納品、販売などが、まずもって「最初の経営課題」であることは言うまでもない。直接の統計がないので推論でしかないが、事業承継問題の「緊急性の欠如≒他の経営課題を解決する優先度が高い」という点も、事業承継が思うように進んでいないことの一因である可能性がある。

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