事業承継コラム

事業承継の成功・失敗事例にみる法務と経営のクロスチェックの重要性

前回の事業承継コラム「事業承継を「1つのビジネスチャンス」と捉えていただく(先代経営者の視点から)」では、事業承継を後回しにしがちな経営者が多い中、事業承継への早期取組が利益をもたらしうる旨をお伝えしました。

本稿では、平成28年12月に中小企業庁により発行された「事業承継ガイドライン」内に記載されている事例を紹介し、事業承継への早期取組および事業承継における法務と経営のクロスチェックの重要性についてお伝えします。

事業承継の成功事例と失敗事例

以下に、親族内承継(先代経営者の子への承継)を円滑に成功させた事例と失敗した(社長解任に至った)事例とを紹介します。

成功事例

中小同族会社の創業者である社長A(72歳)は、後継者である子Bに社長職を譲った上で引退することを考えていた。(中略)Aは社長職をBに譲ることはまだしも、株式を譲渡することにより会社運営の決定権を渡すことは絶対できないとして悩んでいた。その後、相談に赴いた事業引継ぎ支援センターの助言も踏まえ、(中略)事業承継計画を策定することとした。

(中略)Aは、3年後に社長職をBに譲り、5年後までに全株式をBに集中することを盛り込んだ事業承継計画をBとともに策定した。策定した計画については、主要取引先や金融機関などにも開示し、その賛同を得ている。現在AとBは、社長業の引継ぎを行うと同時に、Bを中心として事業承継計画に盛り込んだ新規事業に着手するなど、二人三脚で事業承継計画を実行に移しており、業績も順調に推移している。

失敗事例

(前略)中小同族会社の社長A(76歳)は、高齢を理由に後継者である子Bに社長職を譲り代表権のある会長に就任した。しかし、会社の実権を渡すのは時期尚早として、株式については継続してAが100%保有していた。新社長に就任したBは、株式はいずれ譲渡してもらえばよいと考え、社長交代に際して株式の譲渡時期といった具体的な取り決めを行わなかった。

社長交代以降、Bが主導して急速な経営改革を断行し、新規顧客の開拓や利益率の改善、経費圧縮等により会社の業績は回復。(中略)しかし、Aは会社運営に関する相談をほとんど持ちかけられなかったことから内心面白くなく、加えて一部の古参従業員から不満をぶつけられたこともあり、臨時株主総会を開催してBを解任してしまった。社長に返り咲いたAを中心に事業は続けられているが、社内の不和を主因として赤字に転落。取引先からは不自然な社長交代に関する問い合わせが相次ぎ、取引継続に関する不安が高まっていた。(後略)

何が成否を分けたか ~弁護士×中小企業診断士の視点から~

いずれも親族内承継の事例ですが,失敗例の最大の問題点は,株式の譲渡時期や経営改革等の事業承継に伴う様々な変革要素に関し,事前の具体的計画やステークホルダーとの事前調整が十分になされていなかったことに尽きるでしょう。

社長として,周囲の反対を押し切って改革を断行しなければならない場面があることは確かですが,支配権を掌握していない段階で行うと,失敗例のような結果になることも十分にあり得ることです。

反対に,先代経営者として,後継者が万が一誤った方向に進んだ場合は阻止しなければならないことも確かですが,既得権者の意見や目先の感情に流されて状況判断を見誤ると,失敗例のような結果となってしまいます。

大切なことは,株式の譲渡時期や経営改革の方法等,事業承継に伴う様々な変革要素に関し,ステークホルダー,とりわけ先代経営者と後継者との間で,事前に具体的計画を詰めておく必要があります。

とはいえ,いざ実際に事業承継を進めるとなれば「いつから教育を始めるのか」,「代表権をいつ譲るのか」,「株式をいつ・どのような割合で譲るのか」などの重要事項の内容・時期を決定するのは難しい問題で,そのために,弁護士や中小企業診断士などといった専門家の関与が必要となってくるのです。

中小企業診断士の視点で事業承継を考えた場合,事業承継の実現に向けて,①人員体制や組織体制はどのように進めていくべきか,②営業利益や経常利益はどのように維持・変革することが予想され,どのように維持・改革していくべきなのか,③借り換えや保証人の切替などの金融調整や財務管理はどのように行っていくべきか,④社長の交替に伴って使える補助金はないか,などといった,主に経営面のサポートを行っていくことになります。

これに対して,弁護士の視点で事業承継を考えた場合,①移行期の先代経営者や後継者の役職や権限をどのように扱うべきか,②株式の譲渡をどのように進めていくべきか,③①や②をベースに,各種契約書はどのような体裁・文言にするべきか,などといった,主に法律面のサポートを行っていくことになります。

言い換えれば,経営面がいわばソフト面,法律面がいわばハード面であり,事業承継を円滑に進めるためには,両側面の調整を上手く図っていく必要があります。

なお、事例中で相談先として挙げられている「事業引継ぎ支援センター」は、国が円滑な事業承継を支援するために各都道府県に設置している公的支援機関で、無料相談にも対応しています。事業承継への取組についてご不安を抱えておられる場合には活用をご検討ください。大阪の場合は「大阪府事業引継ぎ支援センター」が大阪商工会議所内に設置されています。

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