コラムその他

弁護士×中小企業診断士の視点②:「中小企業診断士」の魅力はどこにあるのか その2(弁護士中村真二のコラム)

「退職代行」は「非弁行為」?

最近、「退職代行」というサービスが流行っているそうだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190325-00000054-asahi-soci

朝日新聞デジタルによると、「会社を辞めたいけど、辞めると言い出せない。そんな悩みに応えようと、本人の代わりに退職に関する連絡をする」システムだそうで、サービスの仕組みとしては複雑なものではないが、

①労働問題、という、いわば、半恒久的で熟成された法的市場であること
②「退職代行」というネーミングが醸し出すお手頃感
③3~5万円、という、労働者側の現実的な値段のお手頃性

などにより、個人的には、このサービスは、爆発的に広がる可能性があるのではないか、と考えている(私自身は、専門性等が異なるので、やらないが)。

もっとも、このサービスをめぐっては、「非弁行為」にあたるか否かのギリギリのラインということで、弁護士と非弁護士との間で、せめぎ合いも生じているようだ。

まず、「弁護士」の立場として第一感を述べると、このようなサービスを弁護士以外の者が行うのは非弁行為のおそれが極めて強く、クライアントの利益保護の観点からすると、弁護士以外の者に依頼することは絶対にお薦めしない。

退職代行の後に、会社側が怒鳴り込んでくるなどして紛争が拡大しても、弁護士以外の者だと「非弁行為」として対処しない、対処できないわけで、同じ値段であれば、絶対に弁護士に頼んだ方がクライアントにとってお得だからだ。

「退職代行」を「非弁行為」と叫ぶ弁護士に一言モノ申す

もっとも、中小企業診断士の資格を取った今だからこそ、「退職代行は非弁行為となる場合があるので、注意するように。」という「弁護士」の側に敢えて言いたい。

「では、あなた方は今まで、クライアント視点に立って、それだけのサービスを考案、提供してきましたか?」

前述したように、「退職代行」のサービスの仕組み自体は極めてシンプルで、会社を辞めたがっている本人のために手紙などを出すというもので、古来よりある弁護士の法的サービスそのものである。

このサービスの上手な視点は、「退職代行」というネーミングが醸し出すお手頃感と、3~5万円という現実的な値段のお手頃性をうまくマッチングさせたところにあるわけで(業者の側の採算性まで考えるのであれば、サービスの定型化と業務効率化まで考える必要があろう。)、さらに言うと、「辞める自分にも落ち度があるのではないか。」、「あんまり大事にしたくない。」という顧客心理をも巧みにすくい取っている点も見逃せない。

要は、最初にこのサービスを考えた人物が、市場での顧客ニーズを巧みにつかみ、ネーミングも含めてうまく商品化まで結び付けている点に上手さがあるわけで、「非弁行為(のおそれがある)だから、あとは弁護士に任せなさい。」と、「非弁行為」という金科玉条を掲げて、非弁護士の側やクライアントに呼び掛けるのは、やや違和感を覚える。

過払い金請求や B/C 型肝炎訴訟などで、他の弁護士が連綿と積み上げて獲得した成果を、さらに他の弁護士が大々的に実践して多額の利益を得ることについて暗に批判する弁護士がおり、私もその気持ちが分かるのだけれど、だからこそ、「退職代行」にまつわる問題も、本来は弁護士が自ら切り開かねばならなかったはずの顧客ニーズとサービスであり、「非弁行為を利用した批判はいいけれど、顧客ニーズをうまく拾い上げて商品化できなかった弁護士の側にも、反省すべき点はあるんじゃないのか。」「1件あたり3~5万円という、弁護士の側から見ると、いわば採算の合いにくい部分について、見落としていただけなんじゃないのか。」ということを、緻密な市場リサーチと分析、それに基づいた商品開発、開発した商品を売るための仕組み作りや膨大な販促活動など、顧客に受け入れられるモノやサービスを提供することが如何に大変であるかが多少なりとも分かった今だからこそ、感じざるを得ないのである。

私も本職は弁護士であるし、顧客ファーストの視点で考えても、「退職代行」は、いずれ弁護士に集約されるべき法的サービスだとは思うが、それを提供する「弁護士」の側にも、やはり、ひと言モノ申さざるを得ない。

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