コラムその他

弁護士×中小企業診断士の視点③:「中小企業診断士」の魅力はどこにあるのか その3(弁護士中村真二のコラム)

法曹人口の増加問題は、弁護士同士の競争激化の問題に集約される

法曹人口の増加問題を機に、弁護士は昔よりも食えなくなっている(らしい。当時を経験していない私は知らないが。)ものの、今なお、文系最強の資格であることは間違いない。

マイケル・ポーターのファイブフォース分析でいえば、確かに、「参入障壁」が若干低くなって弁護士が増え、弁護士同士の競争が激しくなったのは間違いない。

もっとも、「非弁行為の禁止」に守られ、圧倒的な「参入障壁」が損する現状は今でも変わらないし、「供給元」が突然消えたり少なくなったりしているわけでもない。「弁護士」に代わる圧倒的な「代替品」も登場していないし、「買い手」(≒需要)については、組織内弁護士の増加などからすると、法的市場はむしろ少しずつ増えているのではないかとすら思う。

要は、同業者との間の差別化を図ることができれば、基本的には法曹人口の増加に伴う弁護士の収入低下の問題はクリアできる、と個人的には思う。それでも「弁護士として食えない」のであれば、それは法曹人口の増加問題とは全く無関係の、例えば「社会人としてまともにコミュニケーションが取れない。」とか、「顧客が弁護士に求めてくる、一般的なスキルが備わっていない。」とか、「(差別化は出来ているけれど)向かっている方向に顧客ニーズがそもそも存在しない」とか、別の要因に基づくもので、もはや資格云々の問題ですらないと思う。

「弁護士×中小企業診断士」で弁護士同士の差別化は図れているとは思うが・・・

公表値より、全国にいる「弁護士×中小企業診断士」のダブルライセンスを取得していると思われる人数を試算してみた。

・大阪診断協会人数(A):1,055名(2018年12月)
・大阪診断士会人数(B):215名(2018年4月)
・大阪診断士会に登録する弁護士数(C):4名(2019年2月)
・大阪弁護士会人数(D):4,562名(2018年3月31日)
・日弁連全体人数(E):40,066名(2018年3月31日)

⇒大阪の「弁護士×中小企業診断士」数(X1)
 =C×(A÷B)≒ 20名(大阪弁護士会人数の約0.4%)

⇒全国の「弁護士×中小企業診断士」数(X2)
 =X1×(E÷D)≒ 約180名(日弁連全体人数の約0.4%)

弁護士同士だと、全国で約4万人、大阪で約4,500人との競争だったのが、上記の通り、「弁護士×中小企業診断士」に絞ると、全国で約180名、大阪だと約20名に絞られる。

若手弁護士を中心に人気の資格なので、今後増加していくだろうが、それほど取得が簡単な資格では無く(弁護士の場合、特に勉強時間を確保するのが一番大変だと思われる。)、急激に両資格を保有する者が増える、ということは無いと思うので、ダブルライセンスにより、同業者との間の差別化はある程度図ることができているのではないか、と思っている。

逆に言えば、もしこれで「食えない」ような事態が起きれば、上記の通り、「法曹人口の増加」を言い訳にすることはもはやできない(≒私の人格など、個人的な資質に由来する問題の可能性が非常に現実味を帯びる。)と思われるので、プレッシャーを感じている自分もいる。

驕らず、謙虚に。

顧客ファーストの視点を忘れずに。

「弁護士」が文系最強の資格であれ、「弁護士×中小企業診断士」のダブルライセンスであれ、資格は所詮、手段に過ぎないこと、重要なのはそれを使いこなす個人の資質であること、に変わりは無い。

弁護士に成り立ての頃に、先輩弁護士に受けた薫陶を胸に、今後も良質なサービスの提供を心掛けていきたい。

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