「権利義務取締役」の功罪とその対処法①~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
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この「権利義務取締役」ですが、①取締役としての「権利」と「義務」の両方を有する、というところと、②当事者の意思ではなく会社法で定められた地位というところ、がミソになります。
例えば、②の理由により、「権利義務取締役」となってしまった元役員が、自らの意思で「権利義務取締役」を辞任することは許されていません。実際に私の元に寄せられた相談でもあったのですが、赤字経営が続いていることなどにより、代表取締役を辞任して会社の経営・運営から降りたくなったとしても、後任の取締役が決まらない場合、会社の代表役員としての責任から法的に解放されることは文字通り、ほぼ不可能と言えます(後述するように、一時取締役選任の申立、という手続きもありますが、赤字続きで会社の経営から降りたい、という理由で一時取締役の選任が認められることはまず考えにくいでしょう)。
これが、「権利義務取締役」の「罪」の部分になります。
このような事態になってしまった場合、現実には、会社を破産・精算させてしまうか、休眠会社として事実上据え置かざるを得ないなど、法的に取り得る手段は非常に少ないことになります。