役員の退職金について①~内部紛争・トラブル型の事業承継の勘どころ~
3.役員が退職金をもらえるための要件は、従業員以上にはるかに厳しい
では、仮に役員(取締役)に就任する際に、退職金を支払うという合意(特約)を当該役員と会社との間で取り交わしていた場合はどうでしょうか。
裁判例は、このような場合でも、退任取締役は、基本的には退職金を会社に対して請求することが出来ない(最高裁昭和56年5月11日判決、東京地裁平成3年7月19日判決等)と判断しているほか、東京地裁の商事部の裁判官等で構成される東京地方裁判所商事研究会が編者となって出版された「類型別会社訴訟Ⅰ」〔第三版〕によれば、退任取締役は、会社に対して退職金支給の株主総会決議をするように請求する権利もないという見解を明らかにしております(同120頁)。
このように、役員が退職金をもらえるための要件は、従業員以上にはるかに厳しいのが現実です。
実際上も、社内昇格により従業員の地位を離れて役員に昇格する際は、一旦、従業員の頃の退職金を計算して支払ってしまった上で、役員時の退職金は取扱い上も区別するのが一般です。
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