取締役の解任のために、株主が株主総会を開催することはできますか?
Point3.裁判所から株主による株主総会の開催許可を得るための幾つかのポイント
(1)具体的な手順としては、まず、株主は、取締役に対して株主総会の実施を請求しなければなりません。条文上、「取締役」とありますが、大阪地方裁判所では、原則として代表取締役に対して請求することが求められます。
また、法律上は書面の通知は求められていませんが、通常は書面で株主総会招集請求書を送付することになります。この際、実務的に注意しなければならないのが、招集の「目的」(要するに議題)のみならず、招集の「理由」(何故その議題を提起するか)をも記載する必要があることです。株主総会招集請求書に「目的」だけ書かれていて「理由」が記載されていない、或いは「理由」が文面から読み取れない場合は、法律上の要件を欠きますので、株主総会招集請求書を送付し直さなければなりません。
(2)一定の株式数(株式割合:3%以上。特例有限会社の場合は10%以上。)の保有期間は6か月が要件とされていますが、閉鎖会社の場合は保有期間要件は不要とされています(会社法297条2項)。閉鎖会社からのご相談のケースが多いせいか、私も保有期間要件を理由にこの手続が出来ないご相談に遭遇したことはまだありません。
(3)取締役に対して株主総会招集請求書を送付した後、会社法上297条4項の要件を満たす場合は、裁判所から許可決定が得られることになりますが、実務的に注意すべき点としては、定時株主総会に関して「基準日」制度(会社法124条)を採用している会社の場合、当該期間(基準日後3ヶ月以内)における定時株主総会の実施時期は会社の裁量の範囲内と考えられているため、会社法上297条4項の規定にかかわらず、株主による株主総会の招集は認めらていないことです。
また、実務上は、株式の帰属自体に争いがある場合も多く、株式の帰属の立証の点に問題があるとして、裁判所から申立の取下げを促される場合もありますので、注意が必要です。
但し、本申立における立証の程度は「疎明で足りる」(イメージとしては5~6割程度)とされていますので、株主が開催した株主総会が、後で不存在・無効・取消の判断がなされるリスクがあることを承知で、一応の「疎明」をした上で裁判所の許可を取付けることも法理論上は可能です。
この辺りは、相談に行かれる弁護士によって対応が分かれるように思えます。