株主総会における委任状の取り扱いについて①
2.上場会社の株式における委任状勧誘規制について
(1)
もっとも、とりわけ上場会社において行き過ぎた委任状争奪戦が行われることにより、市場において株式が適正に評価されないような事態となっては問題です。
そこで、金融商品取引法では、194条において「何人も、政令で定めるところに違反して、金融商品取引所に上場されている株式の発行会社の株式につき、自己または第三者に議決権の行使を代理させることを勧誘してはならない。」と規定しており、委任状の勧誘について一定の規制を設けております。
(2)
この規定を受けた同施行令36条の2~36条の6及び勧誘府令(正式名称「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」)が、その規制の詳細を定めています。
例えば、委任状の勧誘者は、
- ア 被勧誘者に対し、勧誘に際して、勧誘府令の要件を満たす委任状及び参考書類を交付しなければならず、
- イ 上記委任状及び参考書類を株主に送付すると同時に、その写し1通を勧誘者の住所を所轄する財務局長等に提出しなければならず、
- ウ 上記ア、イのほか、委任状の用紙には、議案ごとに被勧誘者が賛否を記載する欄を設ければならない(別に棄権の欄を設けることを妨げません)など、勧誘府令に従った様式での記載やそれに定められた事項の記載が要求されている等、内容についても一定の制約があります。
委任状勧誘規制に違反した場合、30万円以下の罰金が科せられることになります(金融商品取引法205条の2の3第2項)。
但し、委任状勧誘規制は、金融商品取引法施行令36条の6第1項各号の場合、適用が除外されます。
(参考)
「第三十六条の六 第三十六条の二から前条までの規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 当該株式の発行会社又はその役員のいずれでもない者が行う議決権の代理行使の勧誘であつて、被勧誘者が十人未満である場合
二 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙による広告を通じて行う議決権の代理行使の勧誘であつて、当該広告が発行会社の名称、広告の理由、株主総会の目的たる事項及び委任状の用紙等を提供する場所のみを表示する場合
三 他人の名義により株式を有する者が、その他人に対し当該株式の議決権について、議決権の代理行使の勧誘を行う場合
2 前項第一号に規定する場合における被勧誘者の人数の計算については、同項第三号に該当する場合における当該被勧誘者を除くものとする。」