保有割合別の内部紛争コラム

少数株主が取り得る法的手段③~売主追加の議案変更請求権~

2.特定の株主からの買取のみを高額とすることは基本的に許されない

経営紛争やトラブル型事業承継の問題を抱えている会社の場合,経営権を一応は維持できているとはいえ,対応に難儀している対立株主がいるケースも少なくありません。

そのような場合,会社として,当該株主の株式を一刻も早く買取り,会社経営からの退場を目指す選択が取られることもあります。

中には,対立株主が株式を手放す動機付けをするため、時価純資産価額や相続税評価額よりも高額な値段を提示するケースもあります。

閉鎖会社の株式は、市場性が乏しいため評価が難しく、何が適正な価額かは一義的には判断できません。

しかしながら、会社が、Aという株主から●●円/株で買い取るのであれば、同じ株主である以上、自分の株式も同額で買い取るべきではないか、という少数株主の心情は、理解できます。

会社法は、少数株主の利益に配慮して、そのような場合で必要な株主総会の議決をする際に、他の株主が、Aの株主のほかに、自分の株式も同額で買い取ることを議案に追加するよう請求することを認めました。

これが、「売主追加の議案変更請求権」です。

会社は、特定の株主から自己株式を取得する場合には、授権の範囲を決議する株主総会において、157条1項各号に掲げる事項(取得する株式数、買取総額等)を当該特定の株主に対して行う旨を特別決議する必要があります(会社法160条1項、209条2項2号)。

その場合、会社は、当該株主総会に先立って、全株主に対して、「売主追加の議案変更請求権」を行使することができる旨を通知することが義務付けられています(会社法160条2項)。なお、特定の株主からの取得が、相続人等から取得する一定の場合等(会社法161条~163条)では、売主追加の議案変更請求権は排除されます。

株主は、株主総会の日の5日前(160条3項、施行規則29条)又は3日前(同右。多くの閉鎖会社のこちらに該当します)までに、会社に対して、売主追加の議案変更請求権を行使する旨を通知する必要があります。また、特定の株主及び売主追加の議案変更請求権を行使した株主は当該議案において議決権を行使することはできません(会社法160条4項)。

このように、売主追加の議案変更請求権の行使には一定の制約があるものの、要件を満たす場合に、少数株主は当該請求権を行使することで、処分に困りがちな閉鎖会社の株式を適正価格で処分でき得ることになります。

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