【株式と相続①】代表取締役だった父が亡くなり親族間での相続問題が発生。遺産分割協議がまとまっていない中での株主総会の実施について
問い4
基本的には多数決によって決定して構わない、というのは分かりました。
因みに、株主総会では、私と母とB氏の取締役の再任を決議する予定ですが、多数決による権利行使者の指定で問題ないでしょうか。
答え
はい。
前記最判平成27年2月19日判決において、取締役の選任決議は民法252条にいう管理行為として、多数決により権利行使者を指定して良いと判断されています。
問い5
多数決による権利行使者の指定で問題ないとのことですが、前述した通り、兄とは、まともな話合いが出来るとも思えませんし、話合いがまとまるとも思えません。4分の1の法定相続分のある私と2分の1の法定相続分のある母で過半数を超えているので、私と母の2人だけで話合って、どちらかを権利行使者とすることで対処しようと思いますが、問題ありませんか?
答え
大いに問題があります。
裁判所は、基本的には多数決によって権利行使者を指定して構わない、とは指摘しているものの、協議・話合いの場を設けないまま決定しても良いとまでは必ずしも言及しておりません。
例えば、大阪高裁平成20年11月28日判決は、「共同相続人間で事前に議案内容の重要度に応じ然るべき協議をすることが必要であって、この協議を全く行わずに権利行使者を指定するなど、共同相続人が権利行使の手続の過程でその権利を濫用した場合には、当該権利行使者の指定ないし議決権の行使は権利の濫用として許されないものと解するのが相当である。」と判断しております。
また、東京地裁平成17年11月11日決定は、「権利行使者の指定の際には全準共有者に参加の機会を与える必要がある」と判断しております。
したがって、権利行使者の指定に際して、貴兄に協議・話合いの場を設けない場合は、権利濫用法理等により、その議決権行使が違法性を帯びる可能性が高いと思われます。