保有割合別の内部紛争コラム

検査役選任申立の積極的な活用法③~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~

2.

抽象的に言うと分かりにくいので、具体例を示しながら説明させていただきます。

例えば、対立する一派(役員や株主など)から、「そちらの保有する株式の一部は名義株なのではないか。」と指摘されている、あるAという(株式の)多数派グループがいるとします。対立派の言い分が本当であれば、A側は、株式の過半数を確保できない状況です。

A側は、名義人が真実の株主である、という一定の証拠を保有する傍ら、やや不安が残る上に、対立派が「名義株だ」と主張する証拠も確認したいと考えています。更に言えば、A側は、諸々の事情により、対立する一派と決定的な対立は避けたいとも考えております。

このような場合、私は、任意交渉(話し合い)(調停含む)や訴訟を第一の解決手段として取ることは必ずしも適切ではないと考えております。

単なる任意交渉(話し合い)や調停だと、交渉が決裂した場合の方途が定まっていないため、話し合いが思うように前に進まないことは少なくありません。

一方で、株主総会を実施する前に対立派を被告として株主権確認の訴えを提起する方法、或いは、(強硬策にはなりますが、)検査役を選任せずに、こちら側で株主総会を実施し必要な決議を可決してしまった後、対立当事者から株主総会の決議無効や取消訴訟が提起されるのを待つ、という方法も無くはないかもしれません。

しかし、私は、どちらの方法も否定的な印象です。

細かい説明は省略しますが、前者はあまりにも迂遠な方法で時間もかかりすぎること、後者は株主総会の適法性を蔑ろにしているきらいがあること、何より、「訴訟」自体、当事者間の対立を深めかねない選択であり、どちらの方法も「対立する一派と決定的な対立は避けたい」というA側の要望に正面から応えていないこと、が理由です。

特に後者の方法は、後の訴訟で反対派の言い分が認められてしまった場合など、一歩間違えれば、弁護過誤になりかねません。

設例の様な事案では、株主総会を実施しつつ、総会検査役を選任し、総会検査役を通じて名義株に関する双方の証拠をチェックする傍らで、総会前や総会中のやり取りを通じて、クライアントと対立派の妥協点を探っていくのは、有用な選択肢の一つになり得るでしょう。

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