検査役選任申立の積極的な活用法④~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
3.総会検査役の選任と効用について(まとめ)
内部紛争やトラブル型事業承継において、株主総会を開催した場合、どちらかによる強行採決だけが行われたり(筆者注:少数派株主でも、否決が自明でありつつ、取締役解任の訴えの前捌きとして株主総会を開催することがあります。)、対立当事者が欠席による株主総会の流会を狙う戦略を取った場合は、話し合いの余地などまるでありませんし、そのような場合も決して少なくはありません。また、総会検査役を選任しようがしまいが、例えば役員解任決議等により会社を追い出される方は訴訟等で争っていくしかない場合もあるでしょう。
総会検査役の選任が不要な場合も少なくありませんが、実際、総会検査役を選任した株主総会を実施し、総会実施後には本格的な対立(訴訟活動)に入ることも有り得る、と代理人として覚悟していた矢先、検査役を通じて入手・確認した相手方の手持ち証拠などから、当事者双方の対立の機運が急速にしぼんで、結局、双方で話し合って協議された妥結案が全会一致で可決された、ということもありました。
このように、事案によっては、訴訟と任意交渉(話し合い)の中間的な手法の一つとして、総会検査役の選任(しながらの株主総会の実施)が、内部紛争やトラブル型事業承継の有用な解決策になると思われます。