弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争③
1.名義株問題の予防策①:株主権の証明の始期は「会社設立時から」が基本
名義株問題の予防のために、まず最初に指摘したいことは、たとえ社歴が百年の会社であっても、株主権の証明の始期は「会社設立時から」が基本、ということである。
株券発行会社で適正に株券を作成・保管しているようなケースや、法令の要件を具備した株主名簿を適正に作成・保管しているようなケースなど、株主権の証明の一部或いは大部分を省略できるケースは確かにある。
更に言えば、株主権の帰属や経歴に当事者間で争いが無い場合は、これらの書類は不要である。
しかしながら、私のところに相談に来られる方の多くは、まさに「株主権の帰属や経歴に当事者間で争いがある」ケースであり、不備があれば、相手方がそこを突いてくる可能性は十分にある。
これを読んでおられる読者が中小企業の経営者や株主など当事者の方であれば、胸に手を当てて考えていただきたいのが、「自社に適正な株主名簿はあるか?」「株券はあるか?」「原始定款はあるか?」など、自らが株主であることを「会社設立時から」含めて証明できるかどうかであり、ぜひ一度チェックしていただきたい。