弁護士×中小企業診断士の視点:本当に公平?事業承継で利用される無議決権株式の光と影
1.相続人等に対する株式売渡請求の弱点
平成18年の会社法制定に伴い、株式会社や特例有限会社は、定款に定めることにより、相続人等に株式が移転する際に、当該相続人等に対して売渡請求をできるようになった。
もっとも、売渡請求の対象となる株主(たる相続人等)は、当該売渡請求を承認する株主総会の決議において、その議決権を行使できない(会社法175条2項)上に、特に株式会社の場合、当該株主は承認決議の議決権の定足数からも除外される(同法309条2項柱書)。
そのため、特に経営陣側の支配権が特定の人物の保有株式に大きく依存していた場合、当該人物が死亡して相続が発生した場合、その機会を奇貨とした少数派のクーデターを生じさせる危険がある(同様の指摘につき、金融・商事判例No.1567・1頁等)。