弁護士×中小企業診断士の視点:本当に公平?事業承継で利用される無議決権株式の光と影
2.事業承継の補完策としての無議決権株式の利用
(1)上述の相続人等に対する株式売渡請求の弱点の補完策として、相談等において、無議決権株式が発効されている株式会社を見かけることがある。
少数派の株式を株主総会の特別決議等で無議決権株式に切り替えておくことで、支配株主の死亡に乗じて、少数派が会社の経営権を乗っ取ろうとする芽を予め摘んでおこう、というわけだ。私自身、特に支配株主側から相談を受けた場合には、少数派のクーデター対策や他の相続人への相続対策として、無議決権株式の発効ないし切替を提案・検討する場合もある。
(2)無議決権株式(の発効)は、特に後継者の相続税対策としても機能する。
相続税評価において、無議決権株式も、原則として、議決権の有無を考慮せずに評価される(https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/hyoka/070226/another.htm)。
そのため、生前贈与や遺言等で、後継者には議決権株式を配分しつつ、他の相続人には無議決権株式を配分することで、後継者は、先代経営者と同等の支配権を確保しつつ、相続税の一部を他の相続人に支払わせることができる。