コラム事業承継

弁護士×中小企業診断士の視点:利用できていますか?事業承継の際の様々な支援制度②~低利融資制度~

2.従業員承継(役員承継含む)は「買取資金の用意」と「経営者保証」がネックになりがち

(1)多くの支配株主が就任する、いわゆる「会社代表者」と、少数株主や代表権のない役員、或いは従業員をも含めた「会社代表者以外」とでは、保有資産や責任等は大きく異なる。

会社代表者の場合、自分の差配で役員報酬等を決められる場合が少なくない。端的に言えば、会社資産を順調に形成できている場合は、「会社代表者」は、長年の会社経営を通じて、個人資産もまた、ある程度余裕をもって築き上げることが出来ていることが多い。

一方、その会社が倒産しても、「会社代表者以外」は職を失うだけで済むことが多いが、「会社代表者」はそういうわけにはいかない。通常、会社の借金には、代表者が個人として連帯保証をしているからだ。その負債額も、順調な会社運営が出来ている場合であっても、1億円、10億円を超えることも少なくない。

このように、「会社代表者」の場合、会社経営を通じて大きな資産を築き上げ得る一方、会社経営に失敗した場合は、会社とともに自らの資産をも失うことになりがちだ。

まさにハイリスクハイリターンと言って良く、多くの従業員、或いは役員でさえも、リターンの大きさよりもリスクの大きさに躊躇って、従業員承継を断ってしまうことも少なくない。

(2)そんなハイリスクハイリターンの「会社代表者」を承継することを決心、或いは検討する従業員や役員がネックになりがちな点をもう少し具体的にいうと、「買取資金の用意」と「経営者保証」の2つだ。

「会社代表者以外」の役員や従業員の側が、順調な会社であれば、数千万円、場合によっては1億円を超えるような会社の買取資金を、自らの個人資産だけで準備できるケースは非常に少ないのが実態である。

また、前述の通り、従来、会社の借金には、代表者が個人として連帯保証することを金融機関から求められるの通常である。負債額が数千万円くらいだとまだ住宅ローンと遜色ないが、1億円を超えるような場合は、本人が躊躇うことは勿論、本人の配偶者などの近親者は、「そんな危ない橋、本気で渡るの?やめとき、やめとき!」と、むしろ、積極的に反対に回りたいのが素直な心情ではなかろうか。

このように、従業員承継では、本人のモチベーション、といった主観的な問題とともに、「買取資金の用意」や「経営者保証」といった、金融面での問題も大きなネックになりがちである。

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