事業承継コラム

弁護士×中小企業診断士の視点:事業承継を弁護士に依頼するメリットを考える

2.機を逸した創業者一族

創業者一族の話では、「実は、2回ほど、会社売却の話が出ていました」ということだった。

聞けば1回目は、先代が他界した直後に、取引先の社長が5千万円で会社を買い受ける、という話が持ち上がっていたらしい。2回目は、当時の経営陣が、4千500万円で会社を買い受ける、という話だったそうだ。

どうして実現しなかったのか、を尋ねると、1回目のときは、「もっと高く売れるのではないか」と思って断り、2回目のときは、「他所に売るより安い値段で、仲の悪い当時の経営陣に売るのは心情的に許せませんでした」ということだったそうだ。

「今から考えれば、1回目のときに話を進めておくべきでした。」と創業者一族は悔しがっていた。「残念でしたね。」と創業者一族の話に相槌を打つ一方で、「仮に1回目の第三者承継(M&A)を進めていたとして、そう単純に物事は進んでいたのだろうか?」と私は思わざるを得なかった。

創業者一族の話を総合すると、先代亡き後の会社経営は経営陣の支えが必要不可欠だったこと、経営陣は自分達で会社を買い受けたい意向があったことや、第三者承継(M&A)の話が出た時点では既に経営陣と創業者一族との間で折り合いが悪くなっていたことなどが理由だ。

創業者(一族)以外にキーパーソンがいる場合に第三者承継を進める場合、創業者(一族)のみで話を完結させても、うまく事業承継が進まないことが多い。

最終的に第三者承継を進めるとしても、MBOを希望する経営陣に買収の機会を与えるなどの事前調整は極めて重要であるが、経営陣と創業者一族との折り合いの悪さを聞いていると、自分達だけで調整が図れたようには感じなかった。

冷静に考えると当たり前のようにも思えるが、「冷静になれなかったから、今の結果(廃業)があるのかな」と考えると、妙に納得した気がした。

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