「権利義務取締役」の功罪とその対処法②~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
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「あるAという会社で、現社長(兄)と常務(弟)との間で、相続などを機に、内部紛争ないしトラブル型の事業承継が発生した」という事例を元に、「権利義務取締役」の功罪について、もう少し考察していきたいと思います。
前回説明した通り、会社法の規定により、もともとの一般役員は一般役員としての権利と義務を、もともとの代表取締役は代表取締役としての権利と義務を、新役員が選任されるまで保有することになります。
前回、
『「権利義務取締役」は、現状維持の場合、自分の地位が守られている、という意味では「功」となり、相手方の一派を追い出せない、という意味では「罪」となるのです。』
と説明させていただきましたが、役員として元々与えられていた権限の大きさや元々受領していた役員報酬の多寡などを考慮すると、現実には、現社長派の方が「功」となることの方が多いです。
このように、会社の内部紛争やトラブル型の事業承継が発生した場合、「権利義務取締役」の規定から、現経営陣側は、それだけでアドバンテージを1つ有していることが多いと言えるでしょう。
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