事業承継コラム

「権利義務取締役」の功罪とその対処法③~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~

1.

前回に引き続き、「あるAという会社で、現社長(兄)と常務(弟)との間で、相続などを機に、内部紛争ないしトラブル型の事業承継が発生した」という事例を元に、「権利義務取締役」の功罪について、もう少し考察していきたいと思います。

本稿では、更に、「現社長派が、会社の金を横領していることが判明した。過半数の株式は押さえ切れていないが、何とか退任に追い込めないか。」という事情を加えて、その対処法を考えてみたいと思います。

2.

まず、現社長派が任期満了前であれば、通常通り、
・職務執行停止及び職務代行者選任申立(仮処分)
     ⇩
・取締役解任の訴え(本案訴訟)
という流れを辿ることになります。

(正確には、本案訴訟までに現社長派を解任する株主総会を開催し、否決される必要があります。)

役員による会社財産の横領は、弁解の余地のない違法行為の典型ですので、十分な立証が出来れば、職務執行停止等の申立も比較的認められやすいでしょう。

問題は、現社長派の任期が既に満了してしまっている場合です。

「権利義務取締役」の規定があるために、より具体的には実印や銀行印をそのまま使えるのを良いことに、現社長派は横領行為を引き続き行っています。同じように、職務執行停止及び職務代行者選任申立(仮処分)や取締役解任の訴え(本案訴訟)で、株主側は現社長派の権利義務を奪うことはできないのでしょうか。

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