コラム

役員の退職金について②~内部紛争・トラブル型の事業承継の勘どころ~

2.役員の退職金が支払われない場合の救済策②

~会社や役員に対する退職金相当額の損害賠償請求訴訟~

会社に対する役員の退職金そのものの支払いが認められない場合でも、会社や(会社に残っている)役員に対する退職金相当額の損害賠償請求が認められる場合があります。

後者が前者と区別されているのは、会社による退職金の支払いは特にそれに賛同していない株主の利益保護を図る必要があるのに対し、とりわけ役員に対する損害賠償責任の場合は、そのような事情を考慮する必要が無いことが一つの理由と思われます。

株主総会が一定の基準に従って、退任役員に対する退職金額を決定し支払うことを取締役会等に委任したにもかかわらず取締役会等が具体的金額を決定しない場合や内規や慣行を無視して減額や不支給の決定をした場合、その取締役会等は違法評価を受ける余地が十分あるでしょう。

また、株主総会決議がない場合でも、会社と役員との間で退職金付与の合意(特約)があるにもかかわらず合理的期間を徒過し、また正当な理由もない場合には、退職金に関する議題を株主総会に付議せずに放置したことが違法として、役員の善管注意義務や忠実義務違反が問われる場合があります(京都地裁平成15年6月25日、類型別会社訴訟Ⅰ〔第三版〕131~132頁)。

一方で、仮に会社に内規(役員退職金規定)や役員報酬支払の慣行があったとしても、株主総会決議がない場合や不支給の決議がなされた場合には、株主総会の自主性(東京地方裁判所昭和62年3月26日判決参照)や役員の作為不作為と株主総会(決議)との相当因果関係の問題(内規通りの金額で議案を提出しても株主総会がこれを承認するかどうかは分からない)などから、会社や役員の損害賠償責任が認められることはやはり相当難しいと考えられます(類型別会社訴訟Ⅰ〔第三版〕133~136頁)。

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