コラム事業承継

弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争②

2.真実の株主は実際にお金を支払った人物(名義借用者)

狭義の名義株(株式会社の設立・新株発行の場面)が問題となる場合に,基本となる考え方が,最高裁(第二小法廷)昭和42年11月17日判決である。

同判決は,新株発行において、他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がなされ、名義貸与者と名義借用者のいずれが株主になるかが争われた事案であったが,最高裁は,「真の株主は名義人(名義貸与者)ではなく実際に払い込み・対価の提供を行った行為者(名義借用者)である。」と判断し,いわゆる実質説を採用することを明らかにした。

これにより,実務上は,名義株は実質所有者こそが株主である,という実質説がほぼ確立した(有限会社の場合には,形式を重視した考え方や裁判例もある)。

もっとも,「誰が実際に払い込み・対価の提供を行ったのか」が争いになった場合,その認定は容易ではない。

東京地裁昭和57年3月30日判決(判例タイムズ471号220頁)では,「実質上の株主の認定にあたっては、①株式取得資金の拠出者、②名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意の内容、③株式取得(名義変更)の目的、④取得後の利益配当金や新株等の帰属状況、⑤名義貸与者及び名義借用者と会社との関係、⑥名義借りの理由の合理性、⑦株主総会における議決権の行使状況などを総合的に判断する」とされているが,実際は証拠によって結果が180度変わることも十分あり得るところであり,時にはその認定結果によって,経営権が変わってしまうような場面も少なくない。

紛争が顕在化すると入手しにくい書類もあるため,できるだけ早期に弁護士に相談することを心掛けたい。

以下、私の実務経験を踏まえ、名義株で困ることのないよう、注意していただくポイントを次稿で3つほど紹介したい。(続く)

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