弁護士×中小企業診断士の視点:非上場株式の買取業者について
3.非上場株式を処分しにくい現実
もっとも、非上場株式の買取業者が台頭してくるのは、当不当は別にして、そこに社会的ニーズがあるからである。
社会的ニーズの源泉は、一言で言えば、少数株主側にとって、「非上場株式を処分しにくい現実」にほかならない。
非上場株式が、相続税評価等で廉価に評価されるのであれば問題が表面化することは少ないが、経営陣や支配株主との関係等によっては、支配株主と同様に高額評価されてしまう場合がある。
非上場株式が高額評価され、少数株主が高額の相続税を支払わなければならなくなった場合、当然、それに見合うキャッシュを準備する必要が出てくる。
それでも、少数株主が経営陣や支配株主と良好な関係、或いは良好でなくとも、建設的な話し合いがまとまれば、最悪の事態は避けることが出来る。
ところが、経営陣や支配株主が少数株主の要望を全面拒否した場合、少数株主は非上場株式を何とかして処分しなければ必要な相続税も払えない、という場合が出てくる。或いは、話し合いが決裂し対立が先鋭化した状況によっては、何とかして経営陣や支配株主を困らせたい、という邪な思惑を抱く少数株主もいないわけではない。
そこまで酷いケースはさて置くとしても、非上場株式の買取業者が登場する問題の根っこにあるのは、「非上場株式を処分しにくい」という、少数株主からすると、非常に冷酷な現実にほかならないのである。