株主名簿について①
1. はじめに
会社法上、株式会社(以下、単に「会社」と言います。)は、株主名簿を作成する義務を負い(会社法121条柱書)、作成した株主名簿を本店に備え置く義務を負います(同法125条1項)。
株主名簿作成義務や株主名簿の備え置き義務違反した会社は、100万円以下の過料の制裁がなされます(会社法976条7号、8号)。
しかしながら、国内の会社の大多数を占める中小企業・閉鎖会社においては、株主名簿を備え置かず、そもそも作成義務すら果たしていない会社が数多くあります。
統計を取ったわけではありませんが、株主名簿の作成・備え置き義務を果たしている会社は、私の実務感覚では、甘めに見ても、中小企業の5割に満たないくらい、厳しく見ると1~2割程度の印象です。
会社紛争やトラブル型の事業承継の場合、株主名簿が存在しないこと(作成されていないこと)は、会社側(支配株主側)からみると立証の弱点に、少数株主側(被支配株主側)から見ると、格好の攻撃材料になります。
本稿では、そもそも中小企業・閉鎖会社において、株主名簿の作成や備え置きが浸透しない理由や原因について考察を加えつつ、株主名簿の持つ会社法上・訴訟上の持つ意義に触れた上で、紛争の予防に備えて、株主名簿を作成するための手順についても検討していきたいと思います。