検査役選任申立の積極的な活用法①~内部紛争・トラブル型事業承継の勘どころ~
3.総会検査役の選任と効用について(各論①)
第一に挙げられるのは、前述した、「株主総会が適法に行われることを事実上促進する機能」(違法性の抑止機能)の大きさです。
株主総会の運営はその性質上、弁護士に委ねることが出来ない場合がほとんどですが、中小企業における株主総会(の開催)は、株主側であれ、役員側であれ、或いは少数派株主であれ多数派株主であれ、不慣れな場合がほとんどです。
また、内部紛争やトラブル型事業承継という性質上、反対派の株主や役員が、株主総会の運営中であれ運営後であれ、かく乱を狙って様々な手立てを講じてくるのは十分想定しておかねばならないと言えます。
株主総会の開催にあたっては、主催者と私とで協働しながら株主総会の目的や決議事項に応じたシナリオを作り上げていくとともに、そのシナリオを元にした株主総会の予行演習をさせていただくのは通常の流れですが、イレギュラーな要素の全てに見通しを立てて対策を立てるというのは事実上不可能な上に、また運営者の負担も過度になってしまいます。
そこで、株主総会の開催に先立って、実施される株主総会の運営をリードしていきたいと考える側が、総会検査役の選任を申し立てておくことで、いわば、反対派が株主総会を混乱に陥れようとする目をあらかじめ摘んでしまうことが出来るのです。
このように、内部紛争やトラブル型事業承継の場面では、総会検査役の選任の機能の一つとされる「違法性の抑止機能」が、大きな効果を発揮する場合が少なくありません。
因みに、申立てに際しては、総会検査役の報酬を裁判所に予納する必要があります。
もっとも、最終的には会社の費用が検査役の報酬に充てられますので、株主側で株主総会を開催する場合はそのことも大きな魅力の一つと言えます。