弁護士×中小企業診断士の視点:事業承継を弁護士に依頼するメリットを考える
(注意書:本稿は,筆者の実際の経験を元にした創作です)
1.廃業は会社の死に体
先日、会社の廃業支援を行った。
創業者一族とその他役員・従業員の折り合いが非常に悪かったのが原因だ。私が間に入って調整を試みようとしたが、従業員側は、既に出社すら拒否してしまっていた。
依頼を受けてすぐに本社に行ったものの、誰もいない事務所は、一言で表せば、「既に会社が死んでいる」状態だった。何とか従業員側の説得を試みたが、「もはや手遅れ」とばかりにハナから話も聞いてくれなかった。従業員承継や第三者承継(M&A)の提案もできない有様で、もはや廃業以外に選択肢はないことは明らかだった。
会社の簿価純資産はプラスだったが、生きている会社であれば資産価値のある在庫や設備も、二束三文で買い叩かれることになった。
M&Aであれば2~3千万円は値が付いたであろう「のれん代」も、廃業ということで、0円評価するしかなかった。
ギリギリで赤字倒産は免れたものの、円滑な事業承継が実現していれば、創業者一族に入っていたと思われる数千万円の売却利益が霧散したことは、何ともやるせなかった。
風の便りで、従業員のうち何名かは、次の仕事先がまだ決まっていない、ということを耳にした。
いずれも高齢者で、新しい職場が決まりにくいのは、いつの時代も、若手ではない。
会社が生きていれば活用できていた無形の経験値が、他社でも等しく評価されることは基本的には難しい。自然淘汰といわれればそれまでだが、事業承継の支援者として何とか出来なかったものか、と手遅れながらに思わざるを得なかった。