コラム

取締役の職務執行停止 ~被保全権利とその疎明~

疎明について①〜被保全権利〜

仮処分命令を得るには、仮処分の申立てとともに、仮処分命令を得るだけの要件(被保全権利の存在と保全の必要性)を充たすことを「疎明」しなくてはなりません。仮処分は、そもそも本案訴訟の判決をまたずに処分の効力を発生させるものですので、その命令はできるだけ早急に出す必要があります。したがって、仮処分の審理においては、本案訴訟で求められる「証明」までの立証活動を求められることはありませんが、一応確からしいといえる程度の「疎明」までが必要とされます。今回は被保全権利の疎明について説明します。

被保全権利が存在すると疎明するには、「原告適格があること」と「訴えの理由があること」について疎明しなくてはなりません。

原告適格の疎明

本案の請求権が被保全権利ですので、前提として、原告が本案を提起できるということについて疎明する必要があります。例えば、取締役解任の訴えを本案訴訟とする場合、公開会社においては原告が6ヶ月前より引続き議決権または発行済株式の3%以上(定款でこれを下回る割合が定められている場合にはその割合)の議決権を有する株主であることがそれにあたります。添付する資料としては株券や、株主名簿の写しなどが考えられます。

訴えの理由の疎明

本案の請求権が実際に存在することについても疎明が必要です。例えば、株主総会決議の不存在や無効確認の訴えを本案とする場合では、株主総会決議について瑕疵があったことを疎明する必要があり、取締役解任の訴えを本案とする場合では、取締役解任についての否決決議があったこと(若しくは取締役解任を議案とする株主総会の招集があったことと、否決が確実であること)、および取締役の不正の行為もしくは法令・定款に違反する重大な事実について具体的に疎明する必要があります。訴えの理由についての疎明は、本案の勝訴可能性の疎明という側面もありますので、おおむね本案訴訟において提出すべき資料と重なることになり、実務上、疎明の程度が重視されるポイントの一つとなります。

疎明の方法

疎明における証拠方法は、即時に取り調べることができるものに限られています(民事保全法7条、民事訴訟法188条)。即時とは、証拠の申出との時間的接着を意味しています。証拠の申出と同じ期日で証拠調べを完了することのできる証拠方法であればなんら問題はありませんが、次回期日に及ぶような証拠方法(証人や、裁判所外での検証など)は許されないという見解がありますので注意が必要です。

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